▼ 第1夜 「誕生祭への招待状」


北に属するメルリウム軍事施設管理国【シルヴェス】


緑が聳え立つ白い建物が綺麗に並んだ国。
白さが音に反映したかのように鳥は綺麗に声を鳴らし、無邪気な子供の明るい声は通り過ぎた。
目蓋が重い・・・その目蓋の隙間をやぶって入る光。
光が入ればゆっくりではあるけれど、睡魔から解放され目蓋をあけていく

「ん・・・・眠いなぁ」

眠気が残っている脳を無理矢理働かせる事もなく、ゆっくり起き上ると背を伸ばし小さくあくびを鳴らす。
緑の瞳が映す景色は国同様に真っ白な景色。というのも、置かれている家具の色が白だけだからだ。
少し豪華なベットから重たい足をだらしなく出し、ぶらぶらと足を揺らし軽い運動をし始める。

美しい茶の髪を雑に手入れした割に整う。緑の瞳をした彼女なのだが緑の瞳とはウォルトの人間特有の瞳なのだ。
そして歴としたウォルトの子孫、カイリ=ウォルトである。
ウォルトとは唯一の豪族であり、絶対な権力を持つ上級階流の一族。その令嬢なのだ。
基本的に貴族、ましてや豪族は施設への入会は強制ではないのだが、カイリはメルリウムの軍人として働いている。
カイリの母君にあたるサナエの遺言書に、メルリウム軍事施設への入会手続き書が入っていた事がきっかけだ。

カイリの両親は行方不明であり、唯一自分に優しくした兄はとある事を期に軍人となり戦死してしまい、
残ったのは自分の地位を利用しようとする伯母などに囲まれる生活に嫌気がさしてそこへ逃げたのだ。
もちろん豪族な為、周りからはかなり気を使われたが今ではきさくとなってる。
それもこれも管理長にあたるグランのおかげであるのはカイリも痛感している。

(もう軍に入って7年経つのね・・・)

久々の暇な時間な為、もう一度寝ようと呑気に思った。
最近ではレンリアの動きに気を張っていたせいで、まともに休めない日々が続いていた。
ノルウェーの宣戦布告から警戒は揺るがず、刃の様に精神を研ぎ澄ませる毎日。
今もその状況に変わりは無いが、さすがに精神的にも絶えてきているこの体だ。
休息である今休ませるのが効果的で好都合だろう。
フェアリーの羽で作られた布団に手をかけ寝ようとした時、カイリの部屋の廊下から騒がしい足音が鳴り響く。
やがて足音はカイリの部屋へ近づいたため、カイリが顔をあげたと同時に・・・

「せんぱ〜いぃ!!カイリせんぱ〜いぃ??
起きていますかぁ?起きていますよね!!開けちゃいますからねぇ〜」

明るい声と共に勢いよく扉が開かれた(というより蹴飛ばされた)。
激しい音のあまりに丁寧に扱われるのに慣れたカイリのワイヤーナイフが、机の上から落下し高い悲鳴の様な音を鳴らす。
その金属音は静かになった部屋にはあまりにも五月蠅く、思わずその音に耳をふさいでしまう。
そんなのカイリにお構いなしに入室をしたのは、普通に軍事制度により強制入会させられたサユリ=ベルスである。

「サユリ・・・ノックぐらいしなさいよ」

せっかく寝ようとしたのにという言葉は喉の奥にしっかり留め、タメ息をつき眺める。
しばらくカランカランと乾いた音を鳴らしていたワイヤーナイフも静かになったのでそれを拾い上げる。

「だってめんどくさいんですよぉ?それにノックしなくても、今の時間なら誰でも起きていますってぇ!」

えっへんと言わんばかりに両手を腰にあて威張っている。
どこからそんな根拠が生まれるのか、先輩であるカイリにすらわからない。
サユリはなぜか朝からこのテンションである事が多く、一部からはムードメーカー、悪く呼ばれる時は落ち着きの無い人。

「で?貴方は何しに来た訳?」

「今日!!何の日でしょぉおぉうかぁあ!!!???」

いきなりの質問がこれだ。
はぁ?と言わんばかりの表情を顔に浮かべ、呆れを目線で訴えるがサユリは落ち着きの無い様子でカイリの答えを待っているだけ。

「・・・・グラン隊長の誕生日?」

「ふぇ!?////////////」

当たり前何の日かなんて覚える気もないカイリなため、少々冗談交じりの答えを思い出し声にする。 すれば面白いぼ度にサユリはすぐに頬を赤く染めて、両手を全力で自分の顔の前で横にふっていた。

グランとはメルリウム軍事施設管理長のことで、信じられないだろうが二人は恋人同士の関係なのだ。
「性格や格差などが違い過ぎるのに」と、最初軍事施設の軍人達は驚きを隠せなかった。
なにせサユリは明るくムードメーカー的存在だが、責任転嫁をよくし、よく任務の失敗などをする。
対しグランは優しく、子供の様に無邪気な言動をしたと思えば、
真面目に計画や任務を考案する策士で、責任を誰よりも重く感じている人。まさに二人は対なす存在見たいなものだ。
しかし二人の世界モードは呆れるほどバカップルで、二人曰く「LOVEに差なんて関係無い!」。
そうなのかはさておき、サユリはグランの事を聞けばすぐに顔が赤くなる癖がこの頃最近よく見られるのだ。
青春を喜ぶサユリの気持ちなんて知らないカイリは、「ハッ・・」と1つ馬鹿にしたかのように鼻笑いすれば寝る態勢をとる。
カイリが寝る姿勢をとったため、サユリは本来の目的を思い出したのか「ちっがぁ〜〜〜う!!」っと先程の事を撤回した。

「グランの誕生日はレオの25(5月25日)でまだだしぃ、カーレルの1(1月1日)の誕生日はカイリ先輩でしょうがぁ!!!!」

「そうだっけ?」

「そうですよぉ!!何ボケてるんですかぁ!!??」

少し顔を横に向けながらカイリが言えば、サユリは真っ赤にしていた顔を叩きながらそんな事を大声で言う。
静かな建物の中、絶対サユリの声は今響いている・・・・そうカイリが呆れ思ったと同時に、静かな足音がまた廊下に響く。

「ってか普通自分の誕生日忘れますかぁ!?
歳ですかぁ?歳なんですかぁ!?カイリ先輩はぁ!!!!
いやぁ〜ですねぇ・・・老化現象ってぇ」

「んな!失礼ね!!私はまだ21よ!?
老化現象にはまだ縁の無い歳だわ!!!」

「私からしたらおばさんですよぉ?
なにせ私はピッチピチの18歳で青春まっしぐらな少女ですからぁ」

「自分で青春言わないでしょ・・普通」

年齢の話で盛り上がるカイリ達な為、その足音には気付かず更にガールズト―クへと盛り上げる。
主にはしゃいでるのは自称ピッチピッチの18歳のサユリだが。

「そういえばカイリ先輩はどんな男性が好みですかぁ?」

いきなりサユリはニヤリとした表情でカイリに尋ねるが、考える様子もなくカイリは当たり前な顔で答える。

「お父様見たいな優しくて逞しい方よ」

「うわぁっ、出たよファザコン」

1つ言えばカイリはお父さん以外の異性とはあまり深くかかわらず、
サユリ達見たいに恋愛視したか?といえば即答でNOと言えるほど。

「ファザコンじゃないわよ・・・ってか、サユリはグラン隊長に対し何か不満とか無いの?
恋人だからって、不満とか無い訳無いでしょ?」

一瞬だけムッ・・・となれば、口が軽くすべった。
相手は上司だし言えない事もあるだろうという心配心から出た言葉で、気がついた時にはもうサユリの耳元。
一度パチクリとこげ茶の瞳をキョロキョロさせる。
すると珍しくタメ息を1つくと同時に、呆れた表情へ変貌しサユリが語りだした。

「そりゃぁありますよぉ〜?たぁ〜〜〜んまりとぉ〜。
グランって優しい時とかデレル時とかは可愛いんですヨぉ??
もう本当にグランで良かったって思えるぐらいにですよぉ???
だけど管理長で隊長クラスだからかわかりませんがぁ、私をほったらかしにする事が
最近多くなってぇ「構って!」と言っても応答しませんすぃ〜・・・」

はい?あのグラン隊長が可愛い?・・

カイリの知っているグランはどちらかというと、凛々しいやかっこいいに当てはまる。
そんな事思いつつ、サユリの愚痴話は続く。

「最終的になんていったと思いますかぁ!?「仕事の邪魔だから」ですよぉ!!!!!!!
恋人より仕事が大事ってどういうことですかぁ!?
どこの仕事馬鹿かって話ですよぉ、本当にぃ!!!
まるで仕事が恋人かのように毎晩毎晩同じ個室にいて、
私が入ったら「気が散る」ってなんじゃあああ!!!!ですよぉ!!!
本当にばk「は〜い、サユリ君?愚痴もここまでねw」はぅわぁっ!?」

べチっと頬にビンタの音が響き、そのままそのビンタした手はサユリの頬をつねったまま。
一瞬何が起きたかわからないサユリはただその痛さに悲鳴をあげている。

「カイリ君、おはよう」

ふわっと春風のように優しく柔らかな微笑みをカイリに向ける

「お、おはようございます!!グラン隊長!」

いつのまに入ってきた人物に気付くとカイリは慌てて一礼した。
焔の様に赤い髪はツンツンとしていて、しかし柔らかそうな髪質に見えるのは彼の人柄を表してるのか。
透き通る金の瞳はたれ目がちで、カイリの行為にクスクス笑いながらも優しい瞳でカイリを見つめる。

「そんなかしこまらなくてもいいよ?
実質的に考えたら、私よりカイリ君の方が格上なのだから」

「ふぅらんはにゃじてぇ!!いらいきゃらぁ!!!(グラン離してぇ!!痛いからぁ!!)」

両手でサユリの頬をつねりながらそう言うグラン隊長がなぜか黒く見える・・・
サユリの願いも虚しくグランとカイリは会話を続けた。

「ってかサユリといいグラン隊長といい、ノック無しに入室するのはやめてくださりませんか?」

「どうせ今の時間、誰でも起きているんだからいいじゃないかw」

どっかで聞いた事あるセリフに「はぁー・・」としか返事ができないカイリ。
要件を思い出したグランは、片方の手だけをサユリの頬から離し、胸ポケットから一通の手紙をカイリに差し出した。

「そういえばカイリ君宛ての招待状だよ?」

「いーはーいー!!いはい!!(いーたーい!!いたい!!)」

「招待状・・・ですか?」

それは枠淵に金が飾られ嫌な予感をしつつも白い封の手紙をとり、固めの封をゆっくると開け中身の手紙を読む。

「【今宵はカイリ=ウォルト様、貴方様の産まれた祝福すべき月日です。
ウォルト低にて貴方様のパーティーを行いますので、ぜひとも足をお運びくださいませ。】って・・・・はいぃ!!??」

「どうせ休日だろ?たまには実家に顔出しでも・・・」

驚きの隠せない様子にまたもやクスクス笑うグラン。予想通りだったのか・・・
普段ならこんな家族関係の資料や手紙はすぐに燃やしたりするのが軍事制度なのだが、
メルリウム軍事施設管理長グランはそこまで非道じゃない為現在もカイリに親戚の手紙を渡したのだ。
そして些細な気遣いながら、カイリと伯母達の関係を改善したいというお人好しが働き、
進めてみるのだが・・・・

「お言葉ですがお断りいたします」

無表情のまま声のトーンも変えずあっさり断られる。
自分の地位を利用して婚約を強制的に行ったりして、ただ政略結婚の為だけに近寄る毒蛇的存在。
だから逃げてきたというのに「誕生日」という理由だけで行くというのはどうしても気がのらないのだ。
しかしそんな詳細までは知らないグランなため、ここまで勧めてきたのだろう。

「やっぱり嫌かー・・・」

サユリの頬を片方の手は尚もひっぱったまま、もう片方の手でグラン自身の赤い髪をくしゃっと崩す。
やはり見た目よりも柔らかいらしく、すぐに崩れるがすぐに型は戻った。
視線を下に向けるとふと彼は良い案を思い出したかのように、ニッコリと微笑みながら指を立てながら告げる

「ならカイリ君、これを任務だと思って行ってくれないか?」

「任務・・・?」

そそっと無邪気に言うと、次は通信機を開いてとあるデーターを開いてくれた。

「ほゆうははにゃしてよぉ!!(というか離してよぉ!!)」

さすがに可哀想になったか、それとも五月蠅くて仕方ないのか・・・
グランはつねっていた手を頬から離す。サユリの頬は赤くはれており、半泣き状態でしゃがみこんだ。
意外な一面に茫然とするカイリもさておき、気にせずグランはデーターの処理画面が終わったと同時に続けた。

「最近レンリア軍事施設管理長ノルウェーと連絡つかなくなっていたが、
この頃レンリア軍事所属軍人が何やら調査をしているらしい・・・そして今回の調査対象にウォルト低が入っているのだ」

いきないりのビックニュースに驚愕で言葉を失なうカイリ。
なにせ世界的に豪族として認められたウォルト家に忍び込もうなんて、世界を敵に回す様な行為に等しい。
そのぐらい大規模な事なのだ・・・
先程まで無邪気そうに笑っていたグランは口元は微笑みを崩さず、だが目が笑みを失い始めている。
これは本当の話なのだ・・・カイリを行かせる嘘では無く。

「なんでまた・・・ウォルト低に??」

「さぁ?そこまでは知らない・・・だがノルウェーのやることだ。
良い事柄でないことは確かだ。しかも今回招待状さえあれば入れるらしい。
もしも闇ルートで手に入れたとしたら・・・?これは見過ごせないのだ、軍人として」

次こそは声のトーンまでもが低くなり、一気にその空気を重く変えた。

ノルウェーは戦争によって与えられる権力に飢える「戦乱人」と化した人物だ。
そして他軍人施設より、レンリア軍事施設軍人は人でなしが多いと聞く。
そんな奴等の考える事だ・・・
膨大な権力を得る為に、ウォルトを潰すかも知れない。

ウォルトの誕生祭となればそれ相応の位主が集まるだろう。
そこに管理長がいてもおかしくない・・・そう、ノルウェーも入祭はできるのだ。

「それで今回招待状もら「行きます」・・・お?」

淡々と話し終える前にカイリが返答を返してくれた。それもグランが求めていた答えで・・・

事の重大がわかるからこそ、好き嫌いで片づけてはいけないのだと。
嫌気もあるがプライドがカイリを許さなかったのだ

「そういってくれると嬉しいよ・・・」

「いえいえ、任務ですし」

微笑むグランにカイリも硬い表情を崩し微笑む。
元の素質が良いからなのか、カイリの笑顔はとても凛々しいものだった。
その表情を見ると不意にグランは目線をそらしていたが、明らかに頬を染めていた。

「ま・・まぁ、招待状によると今夜の9時からだそうだ」

「じゃぁすぐ仕度しますね」

そんな二人のやりとりをじぃ〜と見つめているサユリ。しかもなぜか部屋の隅の暗い部分でじめっと・・・
明らかに不機嫌であることが伺えるサユリに気付くと、グランとカイリはやっとでそちらに目線を配る。
じめっとしたサユリとみて思っきし嫌な顔をしたのはグランだ

「・・・・」

「・・・どうしたんだい?サユリ君」

いまだにキノコのようにオーラで存在を示すサユリに問いかければ

「どうしたんだい?・・・だってぇ????」

ふふふ・・・っと不気味に笑いながら、表情は変えずグランの前までゆらりくらりと歩み寄れ・・・・ば

「何カイリ先輩見て頬染めてるのぉ!!???
グラン意味不ぅ!!!グランキモいぃ!!グランの根暗ぁ!!グランのムッツリぃい!!!!!」

「は、はぁ!??誰が意味不明できもくて根暗でムッツリだ!!??」

いきなり半泣き声で、しかも大声で愚痴を言い始めた・・・しみじみ思うが、さっから寮内に響き過ぎる。
何が何だかわからないグランは、とにかく言われた言葉の矢に文句をつけるがサユリは愚痴をやめない。

「なにさぁなにさぁ!!!滅多に和らんだ表情を見せないからって、
なんで頬を染める訳ぇえ!!???初々しいぃ!!ロリコンー!!!ショタ好きぃ!!!」

「何馬鹿な事言っている!!???しかも私は餓鬼好きじゃないって!!!ちょっと興味あるだけだ!!」

「それをロリコンとかショタコンって言うんだよぉお!!!」

サユリの呆れた発言に、次第にグラン隊長も声を荒げていくが、更にそれに対抗しようとサユリも声を荒げていく。
傍から見ればただの痴話喧嘩にしか見えないこの光景だが、2時とはいえかなりの迷惑である・・・・
ふとカイリが窓の景色に目を配ると、外に出ている人が明らかにコチラを見ている。っというより、この寮を見ている。
更に更に言えば、寮のこの一室の方に目線がいっている人もいる。おもわずカイリは窓のカーテンを閉めて光を遮断した。
外の視線が痛すぎる・・・今は鳥の視線すら嫌に感じるカイリをおいて、恋人達の喧嘩は激しさを増して行く一方にすぎない。

「ってか31のおっさんが18と付き合っているなんて、ロリコン意外の何者でもないじゃん!!!」

「誰が31歳だ!!!誰が!!!まだ私は28だ!!!20代後半だとしても断じて30代ではない!!!
サユリだって他から見れば財産目当てしかならないだろ!!!」

「対して財産無いくせによくぬけぬけとwwww」

「二人共静かにしなさい!!!!!」

荒げていく二人に等々我慢できず、カイリも声を荒げて仲裁に入った。
まさかカイリが荒げた声を出すなんて想像していなかった二人の為、ポカンっとカイリを見ている・・・・
静かになった部屋の中、ようやく鳥のさえずりと春風のざわめきが聞こえてきた。

「・・・・喧嘩なら別でしてください。周りの目線がとても痛いですし、何より迷惑です・・・」

静かにそう告げると、我に返った二人はカイリの閉めた窓際へといき、ゆっくりとカーテンを開ける。
そこにはまだカイリの見た景色があり、周りの目線がかなり痛い・・・

「・・・謝罪してくる」

ボソッとグランがそういい、カイリに向き直ると「すみません」と深く反省した様子で深々と頭を下げられた。
なぜか「いえいえ!」とカイリも頭を下げている為、奇妙な光景に見えてしまう。
それを見て笑いをこらえているサユリに、グランはイラッとしたのか

「サユリ君、カイリ君のパーティの付き添いしなさい」

「なんでぇえ!!????」

「カイリ君一人じゃやっぱ心配だし、今の件の謝罪として」

ちなみにサユリは孤児だったのでそんな経験は皆無。プラス嫌いに等しい。
ましてや貴族のパーティな為尚更なのだ。

「それに相手はレンリアだ・・・・万が一を想定しての事だよ」

「それでも無理ぃ!!」

「サユリ、グラン隊長に我儘を言わないの」

「そうだ、私はこれでも管理長だwwwwwww」

見下したような言い方に更にいらつくサユリだが、実際の地位なのだから仕方あるまい・・・
渋々サユリは承諾するが、ある問題点に気付く。

「そういえば私、ドレスとか持っていないんですけどぉ??」

「どうせ私とサユリの体系似ているし、私のドレス貸すわ」

逃げられる術だと思って言った事なのに、アッサリと解決されてしまった。
そんな事しているうちにすでにグラン隊長は部屋を退室しており、私情による近所迷惑の謝罪へと回りに行った。
さすが行動力が早いのだが、ぱっとしないというふうな顔をするサユリ。

「なんか納得いきませんよぉ〜・・・」 そういうと同時にサユリの通信機が鳴り響いた。
優しい音色を聞く限り、サユリの設定ではメール受信の音だ。
今の時間帯から誰だろうと、カイリも気になりサユリの通信画面を覗き込む。
ゆっくりと操作をしてメール内容画面に切り替えると・・・送ってきたのは先程までいたグラン隊長からだ。

【言っとくけど私は何も悪い事していない。
カイリ君の邪魔にならぬよう、任務の遂行をするように♪♪
By,天才的な管理長:グラン・アングレー】